実践する思考

主に社会科学と教育に関して、また読んだ本の書評も書いていくつもりです。

敷居は徐々に低くするもの

討議民主主義という試みがある。市民が話し合いのうえで合意し、合意は政策決定の過程で考慮されなければならないというものである。現在の単純に投票を重視する民主主義とは異なり、市民の討議の結果を政策に反映することが重視されている。2010年前後に、…

神社の楽しみ方

樹齢数百年の高木に阻まれ、陽光はまばらに射している。場所によっては昼間でも暗く、鎮守の森が古来より続いてきたことを想起させる。俗世とは無縁な静謐な環境は、そこになにか神聖なものを感じさせる。神社に参拝した時、こうした独特の雰囲気を感じられ…

日本再発見

明治維新を経て西洋的価値観が一気に日本に流入した。民主主義("democracy")もそのうちの一つであった。民衆による統治という民主主義の概念は、天皇による統治を国体とする日本の歴史とは対極に位置しているように見える。しかし、民主主義と親和性を持つ…

アメリカは閉じていく

第二次世界大戦後、アメリカはGATT(現在のWTO)の設立など国際貿易体制の構築を主導してきた。今、その体制は主導者自身によって骨抜きにされつつある。トランプ大統領は、中国が知的財産権を侵害しているかの実態調査を米通商代表部に命じた。不正…

政治参加の意義

フランス革命に大きく影響を与えたルソーは次のような言葉を残している。 「イギリスの人民はみずからを自由だと考えているが、それは大きな思い違いである。 自由なのは、議会の議員を占拠する間であり、議員の選挙が終われば人民はもはや奴隷 であり、無に…

柳田の真意(前回の記事の補足)

前回の記事の中で 柳田国男の言う一人前の選挙民は生み出されていないように思う。というのも、一人前の選挙民とは、新聞を批判的に読む能力を有する者であり、新聞離れが顕著な現状において新聞を批判的に読むどころか触れない者が増えいているのだから、一…

柳田の理想と教育界のサボタージュ

民俗学者の柳田国男は、戦後に新設された社会科の目標を「一人前の選挙民をつくること」とした(西内裕一「『柳田社会科』の目標と内容についての考察」)。 ここでいう一人前とは、手紙が書ける程度の平凡な能力、そして新聞が読め、世間の動向を把握できる…

安定した政治のための工夫

アメリカでは大統領選挙の真最中である。ドナルド・トランプ氏が共和党の正式候補となり、民主党の正式候補となったヒラリー・クリントン氏と激戦を繰り広げている。世界最強国家の首長を決定するだけあって、アメリカ国内だけでなく世界中から、次のリーダ…

財政投融資とは何か。

政府の経済対策が28兆円に上ることが今月2日決まった。リニア中央新幹線の全線開業の前倒しなどにより大規模なものとなったが、不安の種は財源をどうするかということである。政府は建設国債を発行するほか、財政投融資で賄うとしている。あまり聞きなれない…

北海道新幹線から考える資本主義

北海道新幹線が3月26日に開業してから3週間が経過した。整備計画が立てられてから実に43年が経過しており、まさに日本中を新幹線で結びつけるという「悲願」が達成された事業だといえる。しかし、前評判ほど業績は良くないようだ。開業2週間時点での平均…

共同体を作る宗教

最近、「絆」や「コミュニケーション」、「コミュニティ―」といった言葉をよく耳にする。なぜ、今になって絆やコミュニケーションといったことが注目されるようになったのかを、宗教をキーワードに考えてみたい。 宗教とは、人々の共通の価値観を提供するも…

社会主義という宗教

歴史的に見れば、宗教は貧困や差別などの社会矛盾が蔓延しているときに拡大してきた。イスラム教やキリスト教、仏教の世界三大宗教ですら例外ではない。宗教は差別や格差などが社会に蔓延しているときに勢力を伸ばしてきたのである。 イスラム教はアラビア半…

「普遍的な」人権思想、ヨーロッパで生まれた人権思想

今年は国際人権規約が採択されてから50年になる。なぜかは分からないが、「人権」という言葉を聞くたびに不思議な違和感に襲われる。今日はその人権について考えてみたい。「朕は国家なり」というルイ14世の言葉に現れているように、中世末期のフランスでは…

新しいアメリカンドリーム

人は夢を見る。夢は、多くの人を魅了する。1867年のロンドンでマルクスは『資本論』を発表し、それ以降、彼の思想は世界中の人を魅了していった。そして、現在でもなお、大西洋を隔てたアメリカでも、マルクス主義から発展した社会主義を掲げる人物が人々を…

立法とは何か

イギリス人民は、選挙中は自由だが、選挙が終われば忽ち奴隷となるという言葉をルソーは残している。この言葉は今の我々の議会制民主主義を考える上で大きな示唆を含んでいる。今日は議会の主な役割である立法機能について、日本の「国会」を例に考えてみた…

自律的である必要性

中学校学習指導要領の道徳では、その内容として自律性を養うことが項目の一つに掲げられている。道徳における自律性の必要性とは何なのかを今回は考えていきたい。自律性とは、自らが立てた規範に従って行動することである。つまり、他人から言われたままに…

歴史を教えるということ

教師が学校で歴史を教えるということはどのようであるべきなのだろうか。そもそも歴史とは何なのかということを考えると、一般的に歴史とは「過去から現在までの変化の様子を記録したもの」である。つまり、歴史とは社会や文化、思想から地形までの、ありと…

「国民」って誰のこと?

headlines.yahoo.co.jp 平成27年9月15日、学生団体SEALDs代表の奥田愛基君が参議院特別委員会の公聴会で意見陳述を行った。その中で彼は、「国民」の多くが安保法制に反対している趣旨の発言をしていた。以下は彼の意見陳述の一部である。 ①「この安保法制に…

あらゆるところにある「空気」

電車内での出来事である。私の近くに親子4人が座っていた。その内の1、2歳くらいの男の子が泣いていて、親がなだめても泣き止まない。思わずそちらに目を向けると、母親と目があった。気まずい。しかし、うるさいものはうるさい。だがいよいよ耐え切れず…

1つのEU、2つの立場

www.sankei.com 衝撃的な写真が世界中を駆け巡った。浜辺に横たわるシリア人男児の遺体写真である。男児の名はアイラン・クルディくんだ。欧州への渡航途中に乗っていたボートが転覆し、母親と兄と共に無残な姿で打ち上げられた。生存の保障を求め、ヨーロッ…

民主主義と有権者の態度

アメリカ大統領選挙が始まった。最新の世論調査によれば、共和党候補の中でドナルド・トランプ氏がトップを独走しているようだ。 思うに、氏がトップを独占している大きな理由はその発言の歯切れの良さだろう。例えば、「米国を再び偉大な国にしよう(Make A…

国民国家の限界

ドイツ:首相、難民の受け入れに意欲「成し遂げる」 - 毎日新聞mainichi.jp ヨーロッパに大挙して押し寄せてきている人々がいる。彼らは、中東や北アフリカなどの地域からの難民である。そして、彼らの目的地は、ヨーロッパの盟主ドイツである。そのあまりの…

接続語に心を向ける

『「が」に注意を払うべし』とは、社会学者の清水幾太郎氏の言葉である。我々は日常会話の中で、「が」という接続語を頻繁に用いる。僕もよくやってしまう。例えば、次のような文である。 私の専門は社会科ですが、言語にも興味があるのですが、学生の間はジャン…

集団的自衛権とは何か

集団的自衛権とは何か (岩波新書) 作者: 豊下楢彦 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2007/07/20 メディア: 新書 購入: 1人 クリック: 23回 この商品を含むブログ (18件) を見る 集団的自衛権の報道を毎日目にする。学生団体がハンガーストライキをしたり、…

権力を支える自覚

高校生の時から、私の周りで政治に関心を抱く人は、ほとんどいなかったように思う。大学の日常会話で政治の話題を出した時には、相手の顔がたちまち曇っていった。「どうせ投票したって、何も変わりはしない から話すだけ無駄だよ」という友人の言葉が今でも…