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実践する思考

主に社会科学と教育に関して、また読んだ本の書評も書いていくつもりです。

集団的自衛権とは何か

 

集団的自衛権とは何か (岩波新書)

集団的自衛権とは何か (岩波新書)

 


集団的自衛権の報道を毎日目にする。学生団体がハンガーストライキをしたり、多くの大学教授が反対の意を表明したりと論壇が活況を呈している。しかし、ネットで調べても新聞を読んでも、いまいち論点が分からない。そんなときに手に取ったのが本書である。


本書が出版されたのは2007年とやや古い。しかし、今日議論されている集団的自衛権は、戦後の日本において幾度となく争点となった問題である。著者は膨大な資料を検討した上で、集団的自衛権の問題を理論と歴史の両面から展開している。


著者曰く、自衛権には、個別的自衛権集団的自衛権があり、どちらも国際法的に認められた権利である。しかし、法律学的に言えば、権利を「持つこと」と「行使すること」は分けて考えるのが常識であり、日本は個別的自衛権を行使できるが、集団的自衛権の行使は日本国憲法では許されていないという。戦後の日本政府の立場に着目すると、岸信介政権以降、一貫して「国際法上は集団的自衛権を有するが、日本国憲法上、それを行使することはできない」という解釈が堅持されていた。


集団的自衛権を認めている国連憲章51条では、集団的自衛権の発動要件を同盟国への「武力行使」としている。しかし、イスラエルオシラ空爆イラク原子力発電所に対するイスラエル軍による先制攻撃)以降、相手が「攻撃する能力と意図を備えていること」という要件に替わった。ブッシュ大統領イラク戦争の際にイスラエルの論理を踏襲し、イラク戦争を開始した。ここで、いわゆる「先制攻撃」が可能となったのである。


このように、本書の前半では集団的自衛権に関する理論的考察が述べられ、後半部では湾岸戦争イラクへの自衛隊派遣など2007年度までの安全保障に関する日本の動向が詳細に分析されている。


安全保障は国家の根幹をなす問題である。しかし、その複雑さは問題を考える上で大きな障壁となっている。安全保障の問題に興味はあるが、複雑さゆえに敬遠していた人に薦めたい一冊である。