読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

実践する思考

主に社会科学と教育に関して、また読んだ本の書評も書いていくつもりです。

新しいアメリカンドリーム

人は夢を見る。夢は、多くの人を魅了する。1867年のロンドンでマルクスは『資本論』を発表し、それ以降、彼の思想は世界中の人を魅了していった。そして、現在でもなお、大西洋を隔てたアメリカでも、マルクス主義から発展した社会主義を掲げる人物が人々を魅了している。バーニー・サンダース氏である。


不思議なことに、資本主義が高度に発達したアメリカにおいて社会主義を掲げる人物が人々から一定の支持を受けているのだ。というのも、アメリカでは深刻な格差が社会問題になっているからだ。一部の富裕層と貧困層との間の所得格差はすさまじく、特に若者は不況の中で失業や学費ローンの支払い等に苦しんでいる。そうした中で財産の分配を通じて平等な社会を目指す社会主義が脚光を浴びているのである。


そもそも資本主義とは何だろうか。資本主義は私的財産の所有を大原則としている。つまり、自らが労働という努力で勝ち得たものは、資本という形で自らのものになる。だからこそ、資本主義体制においては誰しもが努力すれば富を得ることができるという前提がある。これこそがアメリカンドリームの正体であり、かつて多くの人がこの夢を見て、アメリカに移住してきたのであった。


しかし、現実には財産は子や孫へ受け継がれていき、一部の層が独占したまま経済的な格差が固定化してしまう。またアメリカでは、政党による代議士への拘束がないため、議員立法が盛んである。そのため、個人が代議士などに直接働きかけるロビイング活動も活発に行われている。富裕層はロビイストを雇い、政治過程に影響力を行使することで、自らに有利な立法を促す。こうして格差はますます固定化していくのだ。


格差の固定化によって、誰しもが努力すれば富を得ることができるという資本主義の夢が崩壊した。つまり、理屈と実態で大きな矛盾が生じているのだ。サンダース氏が支持を受けているという現象は、社会主義という新しいアメリカンドリームを見る人が増えていることを意味している。大統領選挙を見ていて、そんなことを考えた。