実践する思考

主に社会科学と教育に関して、また読んだ本の書評も書いていくつもりです。

日本再発見

明治維新を経て西洋的価値観が一気に日本に流入した。民主主義("democracy")もそのうちの一つであった。民衆による統治という民主主義の概念は、天皇による統治を国体とする日本の歴史とは対極に位置しているように見える。しかし、民主主義と親和性を持つ価値観は日本の歴史の中からいくつも見出すことができる。

 

その一つが聖徳太子の十七条の憲法である。その一条には「和を以て貴しとなす」とある。ここでは、おたがいに仲良く、調和することが大事だと説いている。その際に、不満があればお互いに言い合い、理解しあうことが大事だとしている。つまり、話し合いを通じて合意形成を図るという民主主義的価値観を1400年以上前の日本の為政者は有していたのだ。

 

また「和歌の前の平等」という言葉がある。渡部昇一上智大名誉教授によれば、「歌を詠む場というのは身分がない」というのだ。例えば、『万葉集』には防人歌など東国の人々の歌が多く掲載されている。ここから、良い歌であれば身分を問わず、平等に取り扱う理念があったことが読み取れる。これは、句会などが身分や階級にこだわらずに行われたことからも、伝統として生き続けていることがわかる。民主主義における重要な価値観である「法の下の平等」が実現するのは日本国憲法を待たなければならなかった。しかし、「芸術の下の平等」は奈良時代から連綿と受け継がれていたのである。

 

このように、日本には民主主義と親和性を持つ価値観が古来より受け継がれてきた。明治時代になって西洋から完全に輸入したのではなく、実は自前の「民主主義」を持っていた。ステレオタイプで歴史を見るのではなく、いつもと異なる視点から眺めることで新たな日本の姿が現れたのである。